分譲賃貸や一戸建ての中には定期借家契約があります。社宅物件では会社規定で契約が不可になることも多いかと思います。
内容は居住用に限りますが詳細について、借上社宅の法人契約の実務面を中心にご案内します。
(参考)分譲賃貸と借上社宅、一戸建て賃貸と法人契約
定期借家物件の概要
定期借家契約は契約期間が定まっており、更新のない契約です。
いま賃貸借契約のうち、普通借家契約は96%強、定期借家は4%弱といわれています。
定期借家契約で契約しない限り、貸主からの解約は法律上ほぼ不可能です。
契約が成立する絶対要件は、契約の際に別途、定期借家契約である旨を説明する書面を用意することです。そして期限の明記が必要です。
そして以下のように運用します。
・普通借家で借りている途中から定期借家に変更することは、借主の同意がない限りできません。
・貸主からの期間内の解約はできません。
・貸主は契約終了の1か月前~6ヶ月前に借主に通知が必要です。怠ると、通知をした日から最低6ヶ月間は借主は住むことができます。(当初の契約期間が6ヶ月以内の場合は不要)
・借主からの期間内解約は、普通借家契約と同様になっている場合が多いですが契約書に具体的な記載が必要です。(法律上は「200㎡以下の物件に限り、転勤や療養などのやむを得ない場合は解約可」となってます。実務上はやむを得なくても解約を認めるケースが多いので、契約時に確認が必要です)
・貸主・借主の合意があれば、再契約が可能です。
・その他「公正証書が必要」と条文にありますが、必須ではないので実務上はあまり運用されていません。
それでは実際どのような物件が定期借家になっているのでしょうか
パターン1 貸主が転勤など
定期借家は平成12年3月から施行されましたが、当時は貸主の転勤中にも貸しに出すことができる事をイメージした法律です。分譲マンションなどの良質な物件を賃貸市場に提供するため、貸主に貸しやすくするという目的が込められていました。
(法律施行当時の賃貸市場は、いまよりも募集物件数が少なかったです)
そのため分譲マンションや一戸建てなどが定期借家で募集しているのをよく見かけます。
メリット
貸主…いずれ戻って住む予定の物件を貸しに出しやすい
借主…期間の縛りがあるので賃料が比較的安い
デメリット
貸主…借主がつきづらい
借主…ずっと住み続けることはできない
パターン2 再契約型
最近増えてきて来ます。借地借家法は正当事由がない限り、貸主からの解約を認めていません。そのため生活態度が悪かったり、滞納しがちであれば再契約をせず出て行ってもらうことを想定している契約です。貸主は通常の借主には入居を継続してほしいと思っているので特に問題がない場合は再契約をしてもらえるケースがほとんどです。更新料と同等の再契約料を設定しています。
本質的に解約が目的ではありませんので、法人契約の際は普通借家契約に変更してもらえるケースがほとんどです。
メリット
貸主…滞納や使用方法違反などなどトラブルが起きたとき、いざというときに契約期間満了で打ち切ることができる。
デメリット
借主…貸主のメリットの逆で、いざというときに居住権を主張できない可能性
それ以外は貸主・借主のメリット・デメリットとも通常賃貸と同様です。
パターン3 建て替え予定の物件
将来、建物の建て替えや土地の借地権の終了が予定されていて、いずれ取り壊しが想定される場合です。
この場合は普通借家への変更はほぼ難しいです。
もし普通借家で契約した場合、取り壊しであってもその必要性を示せない限り、借主が住み続けたいと言えば法律上は住むことが可能です。そのために取り壊しが予定されていると定期借家で契約します。
会社規定で契約不可が多い
上記のとおり、契約期間満了・再契約をしない場合は退去が必要なので借主法人が定期借家の契約を認めていないケースが多くあります。
定期借家契約は平成12年3月に施行しましたが、不動産業者の説明も悪く社員様が契約をしてトラブルになっているケースをよく耳にしました。現在は事前に契約の可否をルール化している借主法人が多いように見受けれます。
いっぽう契約不可の借主法人が多いので、当初の募集は定期借家ながら上記パターン1の場合も普通借家契約での契約を検討していただける貸主は少し見かけるようになりました。
当社では借主法人の契約の可否を確認してご紹介するのでトラブルはありません。
SUUMOやHOMESなどのポータルサイトでは定期借家とは記載が目立たずわからないケースがありますので、特に相場観を見る場合などはあまり参考にされないほうがよいでしょう。