賃貸住宅紛争防止条例(東京ルール)と法人契約

東京都に存在する物件を契約する際は「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」(いわゆる「東京ルール説明書」)の説明が義務付けられています。その内容の説明と、背景についてご紹介します。

賃貸住宅紛争防止条例とは

2004年に施工された、東京都にある賃貸物件を契約する際に、借主に対し仲介業者が説明を義務付けられた条例です。

内容は東京都のHPにも記載されています。

賃貸住宅紛争防止条例(東京都)

東京都は、全国の賃貸契約の約40%が集中しているとの統計もあり、法令施行の平成16年から今まで、退去時の解約精算がトラブル相談のトップだそうです。宅建業者は賃貸借契約の代理または媒介の際に、必ず説明をしなくてはいけません。他県の免許の業者も、東京都にある物件を契約する際は説明が必要です。

目的は、抜粋すると下記の通りです。

①宅地建物取引業者は、不動産取引の知識と経験を有する専門家として、貸主と借主の間に立って物件を仲介する立場にあり、もっとも適任であること。
②宅地建物取引業法では、住宅の賃貸借についての法律上の原則や判例により定着した考え方などについて、重要事項説明として、宅地建物取引業者に義務付けてはいないこと。
③トラブルの未然防止には、借主が、住宅の賃貸借についての法律上の原則や判例により定着した考え方と、実際の契約内容を知り、その相違の有無や内容を十分に理解したうえで
契約することが不可欠なこと。

法令の施行当時、貸主の権利主張をしていた不動産業者が今よりもずっと多く、借主も「敷金は返ってこないもの」「汚したものはすべて弁済」という、判例とは異なる考えが蔓延していました。仲介業者に正しい考えを持ってもらうことも必要だったのでしょう。

内容は

賃貸住宅紛争防止条例&賃貸住宅トラブル防止ガイドライン 改訂版(リーフレット)

上記引用の先のリーフレットに詳細に記載がありますのでご確認ください。

内容の抜粋としては

貸主負担になりうるもの

・いわゆる経年で劣化するものは原則貸主負担 よって年数が経って自然に汚れるものは請求されません

借主負担となりうるもの(例)

・壊れそうなものを放っておいて被害が拡大したものは借主負担(善管注意義務違反)よって、借主は故障などはすみやかに貸主に報告する義務を負います。

・画鋲やくぎなどで壁に穴をあけて下地に届いているもの(通常の使用を超える)

・経年で生じうる汚れを大幅に超えた汚れ(例 1年しか住んでないのに10年住んだ時のような汚損・破損がある)

・ペット飼育不可物件でのペット飼育による損耗(契約違反)

他にも考えられますが、借主負担の考え方をご理解いただく事例とお考え下さい。

実務では

賃貸の契約の際に借主は「重要事項説明書」「賃貸借契約書」のほかに

賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書(ひな形) に捺印します。この説明書は仲介業者印を押印し、借主から捺印をいただくこととなっているので十分説明が必要です。

物件が東京都にあれば、他県の免許の不動産業者でも説明が必要です。

説明書には例外規定を記入する欄がありますが、特約で例えば「退去時のクロス交換は理由の如何を問わず全部借主負担」など過去の判例で認められない内容は当然無効となります。

法人契約の際は、捺印書類が1式増えることになりますが、入居者様のご理解がとても重要な内容になっています。

入居者様へもぜひご覧いただくことをおすすめいたします。

退去時の精算は以前に比べるとルールが明確化したことによりずいぶんわかりやすくなってきましたが、費用が発生する話なのでトラブルになることも依然あります。

退去のときまで貸主・借主双方とも思いやりをもって携わるのが一番の解決策だと思います。